新入社員のOJTの重要性を示す実例をみてみましょう。OJTが機能していれば、企業の成長を後押しできるはずだと言える事例です。

業界は別ですが、 不況下においても大量採用を続けてきた2つの企業がありました。

F社の事例

F社は、数年間、数百名規模で採用を行っていました。
成長期でもあり、現場も人手が足りずに多忙を極めており、新人を配属しても現場では指導ができないので、戦力になるまで本社で2カ月ほど研修してから配属するという方針となっていました。

ところが、数年経って従業員数の推移をみると、採用のペースよりはるかに少ない人数しか増えていません。
その間、業界内でも上位企業に差をつけられ ていました。

K社の事例

K社は、採用人数こそ数十名から百名弱の規模ですが、人数比にすると全社員の2、3割にあたる人数を毎年採用してきました。
新入社員研修に力を入れてはいたのですが、職場に配属するとF社と同じように定着率もあまり高くない状態でした。
しかし、配属後のOJTをしっか りやっていたある部門では、他の部門に比べて新人が定着し、育っていることがわかりました。
そこで、会社として新人のOJTのしくみを作り、力を入れはじめます。配属後に新人の教育を担当するOJTリーダーに対しても研修を実施し、1年間を通じていろんな形で複数回の会合を持ち、ノウハウの共有 化を図りました。
このような研修と会合を数年間繰り返しているうちに、各部署では、新人を指導するツールやノウハウが蓄積され、新人の指導が大まかにプログラム化されるようになります。
数年経つとOJTリーダーを経験した人が管理職となり、OJTを受けて育った世代がOJTリーダーに選ばれるようになりました。そうなると、新人はみんなで指導するものだという雰囲気ができあがり、忙しい部署でもいろんな工夫をして新人を育てるようになりました。

K社は業界平均を大きく上回って成長し、5年ほどで3倍くらいの人数規模となりました。

この2社の例は、新入社員が現場に定着して育つことが、企業の成長にとっていかに影響が大きいかを表しています。育てる方策や育たない原因をOJTだけに求めることはできませんが、OJTが機能していれば、少なからず企業の成長を後押しできるはずだと言えるでしょう。

★詳しくは→ OJTの理論&手法「企業の成長を後押しする」