人材育成力の違いが、少なからず企業間競争の優劣に影響しています。そして多くの場合、人材育成の一定部分は、OJTに頼らざるを得ない状況となっています。

つまり、OJTが重要である「本質的な理由」は、「企業間競争を有利に展開するため」というのがここでの結論です。

もっとも、OJTに頼らざるを得ない状況は、前の記事の「コスト面」「固有技術」「個別指導」といったOJTを重視する3つの理由に整理できるものですが、そのもう1つ上位の目的とし て、企業間競争があり、人材育成のあらゆる手段の1つとしてOJTをとらえておくことが重要だと感じています。

仮に、同じ市場で競争するA社、B社という2つの企業があったとします。現在の企業規模も、売上高も商品力も同じ、資本力やその他項目も全く同じだったとします。
そこに、それぞれ20名ずつ新入社員を採用し、初任給は同じ20万円でした。A社は半年後に新入社員全員が20万円程度の貢献ができるようになり、1年後 には平均して30万円程度の貢献ができるレベルまで育ってきました。一方のB社は、半年時点ではまだ先輩に便利づかいされている状態で、1年後には半分が 退職し、残った10名も10万円程度の貢献がやっとの状態でした。

これだけ見てもかなりの差となっていることがわかりますが、翌年も、その翌年も同じように新入社員を採用し、同じような育成状況だったとすると、A社とB社は数年間で非常に大きな差がついてしまいます。

企業イメージ

さらに組織全体をみると、A社はお互いに切磋琢磨し、全員が毎年5%ずつ実力を高めています。一方のB社は、市場の変化についていけず、全員が相対的な実力で5%ずつ落としていたとしたら、こちらではそれこそ、数年で恐ろしいほどの差になってしまいます。

上記の例は、少し極端な対比ですし、OJTというより人材育成全体の重要性を語っているにすぎません。しかし、現実に生じる差はもっと小さいにせよ、人材育成によって競争力に差がつくとしたら、企業は可能な限りの手段を講じて人材育成に取り組んでいく必要があるはずです。

その可能な限りの手段の1つにOJTがあります。

★詳しくはこちら→ OJTの理論&手法「企業間競争におけるOJTの機能」